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Vol.6
覚悟の決め方 |
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人間にはさまざまな欲望があります。食欲、物欲、性欲、名誉欲がその代表格でしょうか。
欲望というものは手に負えないもので、新聞の社会面に掲載される事件の大半が、この欲望をコントロールできなかった結果と言っても過言ではないと思います。文学や芸能の世界では、「欲望に素直に従う事で芸の巾が広がる」「それこそが人間臭い生き方」といった話もありますが、一般社会の中では即、転落を意味します。
その昔、名僧と称された人達が坐禅を組んだり、滝に打たれて修行をしたのは、究極のところ「欲望を如何にコントロールするか」ではなかったかと思います。
人の生活は日々変化し、新しい局面にぶつかります。それを一つ一つ判断し、答えを出して前へ進んで行く訳ですが、実は答えを要求される対象の殆どが、いずれかの欲望に繋がっています。
人は弱いもので、その場の環境や体調次第で判断ミスを起こします。まして欲望に対処する為の基準を予め持っていなければミスを連発し、遂には命取りになったりします。それを防ぐには欲望に対する限界ラインを設定し、これを判断基準とするしか方法がないと私は思っています。
但し、欲望というものは人間を成長させ、組織を大きくする為の糧でもあるので、限界ラインの設定はその人の立場や年代によって変わります。要は自分の身丈に合った設定がポイントと思います。
人は私を含めて凡人であれば常に思い悩みます。還暦を過ぎてなおこの有様です。従って私の場合は、私生活のあらゆる面で目標を設定し、それを達成する為の欲望の線引きをして来ました。
食欲、物欲、性欲、名誉欲の中で線引きが容易なのは、食欲ではないでしょうか。女性の場合はスタイル維持、男性の場合はメタボ等、個人が比較的取り組み易いガイドラインが一般社会にある為です。しかし、物欲、性欲、名誉欲はコントロールが難しく、多分に個々人の人生観が基準となっているに過ぎません。社会的な指標がないと言っても良いでしょう。
末端の社員が食うや食わずの収入しか得られないのに、経営陣は世間の常識を超えた多額の報酬を得ているケース等は、良い例でしょう。
欲望の線引きとは、大げさに言えば「覚悟を決める」ということです。一旦、覚悟を決めたら迷わない。考え抜いて決めた覚悟であれば、結果が裏目に出ても後悔はしない。この積み重ねの延長線上に悟りの世界があるのではないかと想像しています。
座禅を組んだり、滝に打たれたりしなくても、悟りは開けると思うのです。
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