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Vol.93 錯覚 |
| 2025年12月1日 |
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私は30才代の頃から、世界的に有名な絵画の評価に疑問を抱いていました。
その代表例がピカソの絵です。ピカソは若い頃に極普通の人物画を描いていましたが、次第に人物の特徴をデフォルメした作風に変化したと言われます。
芸術の世界は、どの分野にせよ新しい切り口を見つけなければ有名になれないというジレンマがあります。その意味で、ピカソは抽象画の先陣を切った画家なのかもしれません。
しかし、美術評論家や美術商の間で評価が高くなったにせよ、1枚の絵が中堅企業の年間売上に匹敵するほどの価格で売買されると疑問が生じます。
私はテレビの日曜美術館等の番組が好きでよく観ていますが、美術の分野は全くの素人で、自分で絵を描くこともしません。しかし、これは私個人の感覚に過ぎませんが、私にはピカソの絵が理解出来ず、ヨーロッパの絵画の歴史の中で一番好きな絵は印象画の作品です。
試しにピカソの絵が理解出来るか、或いは好きか否かを数人に聞いてみましたが、イエスと答えた人は皆無でした。
言うまでもなく、物の価値、値段は需要と供給のバランスで決まります。欲しい人が多ければ多い程、物の値段は上がります。
大リーグの大谷翔平が、大リーグ史上最高額でドジャースに入団したのも、ドジャースは十分に採算が取れると計算したからです。
贈答品の分野でも、ブランドで価値が大きく異なります。スーパーで売られている価格の10倍前後で販売出来るのは、品物そのものに10倍前後の価値があるのではなく、ブランドに価値があり、送った側や受け取った側が、「これ程に評価をしている」と言う、プライドを満足させる点に価値があるからです。
ところが、オークションで落札されるピカソの絵を、世界全体で見ても、何人が買えるでしょうか。私には業界関係者が利益追求の為、価格を独り歩きさせている様に見えます。
人間には錯覚という感覚があります。同じ品質、成分の果物を2個並べ、右側の果物の糖度が高いと説明したうえで試食させると、殆どの人が右側に軍配を上げ、次に人を入れ替え、果物を左右に入れ替えて、右側の糖度が高いと説明して試食させると、殆どの人が右側に軍配を挙げたそうです。
ピカソの絵も、これと同じ錯覚があると私は思うのです。
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了 |
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菅谷 勝
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