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Vol.57 免罪符 |
2020年06月04日 |
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生物学者の福岡伸一・青山学院大学教授が、NHKドキュメンタリー「最後の講義」の中で、概略次の様な話をされていました。
「人間の体は筋肉から骨まで、全ての細胞が1年以内に生まれ変わる。だから、1年前に口にした嘘の責任は無い」。勿論、これはジョークですが、厄介な事に脳細胞は生まれ変わっても、記憶や判断の能力は受け継がれ、消えることがありません。
私は父から猪武者と言われただけに、特に若い頃は人一倍失敗したり、人に迷惑をかけたりした記憶が残っています。新聞を読んだり、テレビを観ていると、こうした過去の記憶を呼び起こす報道やドラマに接し、その都度、顔をしかめる破目になります。しかし、顔をしかめている内は、同じ間違いを起こさない、と自分を納得させてすぐに気持ちを切り換える様にしています。
但し、若い頃の失敗を知る人が次々とあの世に旅立たれて行き、若い頃の私を知る人は極めて少なくなりました。年を重ねると体力が衰える半面、こうした利点もあることに気付かされます。
父は95才で亡くなりましたが、生前、私に「友人、知人が殆どいなくなった。俺が死んでも香典がそれ程集まらないから、今の内に香典をくれ」と言いました。
その流れで言えば、私は「あと数年生き残れば、殆どの免罪の切符が手に入る」と思うのです。
免罪と言っても、刑事罰の対象となる様な罪は犯していませんので念の為。
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了 |
菅谷 勝
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